すごく久しぶりの記事アップになりました。
ここしばらくFusion360のCAEの本を書いたり、AIの本を書いたりさらには様々な受託解析で忙しくなっておりました・・・。
さて、ということでCAEのちょっとした活用ネタを書いてみることにします。
通常設計する時には、そもそも、そのパーツが壊れないように設計をしますね。靭性材料ならミーゼス応力値が降伏応力に達したところで塑性変形を始めるのでそこで「壊れた」という判断をするのが一般的で、脆性材料ならいきなり破断するので最大の主応力が最大引張応力に達したときに「壊れた」という判断をするでしょう。
パーツを設計する際には想定する最大の荷重をかけても、降伏応力の1/3程度にまでしか達しないように、つまり「安全率」を3かそれ以上になるように設計すると思います。
そのため「どう壊れるか」までは考えないことも多いと思います。
でも、パーツの用途によっては何度も繰り返しの荷重がかかって、もっと低い応力でも破断することもあります。
いわゆる「疲労」というやつですね。
そのため破断する方向を確認してみたいということもあるでしょう。
さて、先日筆者はあるお客様から依頼された自動車部品の解析で、軽量化と強度のギリギリのせめぎ合いをしている時に破断が起きる位置やその方向を予測することを頼まれました。
ここで使えるのがミーゼス応力値や主応力値そして主応力のベクトルです。
これらをもとに破断が始まる位置や方向を予測したところ、かなりの精度で実験と合わせることができました。
具体的にはどういうことか簡単な例でご説明しましょう。
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題材は丸棒です。
最初に引張りによる丸棒の破断を考えてみましょう。
- 引張り力の場合の脆性破壊
前述の鋳鉄のような脆性材料の場合は、応力ひずみ曲線を見ても塑性せずに突然の破断に至ります。
最大の主応力が最大引張応力に達した時に最大主応力面で破断するということになります。
図のように丸棒をまっすぐ引っ張った場合、断面で破断します。
- 引張り力の場合の延性破壊
靭性材料でおきる延性破壊は、すべり面での相対的な変位で塑性変形が起きて、さらにそのすべり面の分離で破壊が起きることから、最大せん断応力に達したときに破断すると考えられます。
つまり延性破壊での破断は最大せん断応力で判断することになります。
破断方向は最大せん断応力面に沿って起きるため、その方向は最大せん断応力のベクトルを確認すればよいということになります。
ちなみに、ねじりのトルクで破断ではどうなるでしょうか。ねじりの場合の最大主応力や最大せん断応力の方向は以下のようになります。
- ねじり力の場合の脆性破壊
- ねじりの場合の延性破壊
やはり、それぞれの応力の方向を見ればよさそうですね。
ということで、解析をしてみたらどうでしょうか。
こんな感じで丸棒を例にしました。応力集中がおきるように中央に切れ目を入れています。片側を固定して、画面手前側の端面に引張りの力をかけます。
まず、最大主応力を見てみましょう。
予想のとおりですが、最大主応力をベクトル表示すると、ほぼ棒の長手方向の向きになっています。つまり脆性材料はこのベクトル直交する、つまり丸棒の断面で破断することがわかります。
続いて最大せん断応力を見てみましょう。
ベクトルを見ると斜めに走っています。つまり斜めにちぎれていくことが予想されます。
続いてねじりのケースではどうでしょうか。
固定のやり方は同じですが、手前の赤いところがある面にねじりの力をかけてみます。
前の例と同じように最大主応力を見てみましょう。
今度はベクトルの方向が斜めですね。
つまり、脆性材料の場合はこのベクトルと直交する方向が破断面と言えます。
次に最大せん断応力を見てみましょう。
ベクトルは長手方向と直交する方向です。
このことから、実験をする前に、その部品のどこがまず壊れてそこから亀裂が入る場合には、どの方向にというのは応力の値そのものやベクトルを見ることである程度の予測がつけられることがわかります。
延性破壊をするような材料の破断とその方向は最大せん断応力とそのベクトル、脆性破壊をするような材料の破断とその方向は最大主応力とそのベクトルを確認してみましょう。
ぜひ、参考にしてみてください。
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